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またまた聖地巡礼!? M教師学園の超重要シーンを角館に再訪 [プチお知らせ/日々の小ネタ]
告知記事のほうにもレポートを追加したとおり、秋田での講演会も、無事に終えることができました。
ご参加のみなさん、あらためてありがとうございました。
さて、秋田といえば、今までにも何回かやって来たことはあります。
直近では、一昨年の2011年、娘を連れての夏休みの旅行の際に通過しています。
→「佐倉智美&満咲親子、東北で原子炉の中を覗く」
で、そのときにふり返っている、拙著『M教師学園』の終盤で主人公が傷心旅行に出かける東北編の、その題材となるような元となる実体験の際も、やはり青森に至る手前では、秋田県内をあちらこちら彷徨っていたことになります。
→「君との約束が映る空が切なかった世界でいちばん遠い夏」
ですが、秋田市内にガッツリ滞在するのは、じつは今回が初めて。
なので空き時間には、千秋公園を散策したり…
秋田港の新名所・ポートタワーセリオンに足を伸ばしたりと
…市内もいろいろ観光してみました。
で、ふと思ったのですが、上述の『M教師学園』の東北旅行編、あれは季節的にはちょうど10月の今頃に該当するのですね。
しかも、アレはじつは作中の設定では2003年の出来事。
そう、つまり今はあの時点からちょうど10周年なのでした。
そして、主人公が青森県域へ分け入る手前の、とある気付き――自らの生きる困難が「男性」という枠の中であるがゆえに起こっていて、それを解消するには……――に至るという超重要シーン、あれはまさに秋田県内にして「みちのくの小京都」と呼ばれる角館ではないですか!
コレはまさに、この機会に「聖地巡礼」しないテはない!!
ということで、せっかくの今回の秋田訪問を活かして、角館の探訪もしてみることとなりました。
まずは角館に向かう国道105号線の大曲付近。
『M教師学園』主人公・靖彦センセイも、ここを「トヨタ製コンパクトカー」で走ったことになります。
私自身もかつて小説の題材の元となる実体験において通った記憶アリ。
おりしもコスモス畑に揺れる秋桜の向こうに大曲の優しい山並み。
この風景が、この先も傷ついた旅人の心を癒してくれますように。
そしてこの後『M教師学園』の「砕け散る円環」の章は、2節目[太陽の破片]で次のように続きます。
大曲から、さらに30分ほど走った先には角館が位置している。
角館は武家屋敷群が散在する古い街並が、しっとりとした趣を醸し出す、味わい深い町だということである。観光駐車場がわかりやすかったこともあり、靖彦はクルマを止めて、少し散策してみることにした。
なるほど、「みちのくの小京都」を標榜するだけあって、なかなかいい感じである。ただそれだけに、秋の観光シーズンにかかっていることともあいまって、団体ツアーや中小グループの観光客も少なくなく、その中に混じると、今日の靖彦のような男性の“おひとりさま”は、いささか居心地が悪かった。
ほどなく靖彦は中心街を脱出すると、町の中を流れる川のそばへ出た。川べりは遊歩道のように整備されていたので、靖彦はそこに腰をおろして、一息つく形になった。
(ふぅ ………………)
空は晴れて青く、角館の空気はここちよい。それでも靖彦の心だけは暗いままであった。ここまで来ても、結局は何の答えも出ることはなく、希望は見出せない。心の隙間はむしろ広がっているようであった。
しばし靖彦はただ恍惚と川面を見やった。さざ波が反射する陽光は、まるでひとつひとつが小さな太陽であるかのようだ。
(ん……!?)
と、そのとき軽やかに笑う、陽気な話し声が聞こえてきた。見ると、若い女性観光客4人ばかりのグループが、靖彦から25メートルほど離れた川べりにいた。
(……カワイイ子たちやなぁ)
声でもかけて、仲よくなれればいいのだが……と、まずは邪な考えがほとんど自動的に台頭する靖彦だったが、その親しげに談笑する女の子たちの様子を見ていると、どこか胸の中に、フワフワした感覚が湧いてきた。
(イイなぁ……、楽しそうやなぁ…………)
見れば手を取り合ってはしゃいでいる二人と、別の二人なら頬まで寄せ合っている様子も伺えた。
あの輪の中に自分も加わりたい――。そんな願望を、自覚的に反芻しながら、靖彦はしばらくの間、女の子たちをうらやましくも横目で眺めた。
川面には依然として太陽の破片がきらめいている。
「…………ぁっ!?」
そして靖彦は、あることに思い至った。
「…………そうか」
※上記の前後はゼヒ本編をお読みください(^^)ノ
……そんな角館の現在は
なるほど、夏の九州・湯布院でも感じましたが、イイところなんだけど、観光地としてプッシュされすぎて、なんとなく俗化して、知る人ぞ知る穴場的な風情が減衰したモンダイに多少見舞われていなくもない雰囲気。
さりとて黒壁の町並みには、やはり独特の趣が湛えられていて味わい深いです。
武家屋敷群もしかり。歴史の蓄積の賜物でしょうか。
そうして、上述の川べり。
ちなみに雄物川水系の一級河川で桧木内川といいます。
悩める人、そうでない人、誰もが優しく受け入れられる散歩道になってます。
堤防には桜並木(※只今お花見には超絶オフシーズンな10月)。
川面には今日も秋の光を受けて太陽の破片がきらめいています。
女子旅4人組がはしゃいでいたのはこのあたりか!?
(その25m奥で靖彦センセイがひとりたそがれてるという設定)
そうして靖彦センセイ、ここで涙していたのでしょうか。
……「あれから10年」な今、絶望の果てに見出した道は、どこまで届いたのでしょう。
あの日の選択に偽りなんて決してない……。
あくまでも青い秋空の下で、角館の優しい風とともに、今も真実はここにあるよ。
……そんなこんなで、『M教師学園』主人公・靖彦センセイが、この川原で、もはや男として生きる限りは自分の望む人生は何ひとつ叶えられることがないという絶望と、それを覆す希望の端緒をつけてから、はや「まる10年」。
実際に私自身が元となる体験をしてからなら、十数年以上が経過したこの2013年の秋なのですが、こういう機会に、その同じ場所を再訪すると、やはりそんな彷徨の果てに、現在の自分と、それに繋がる世界があるということを実感せずにはおれませんでした。
きっとこれもまた「タイムマシンで10年後の未来へ10年かけてやって来た」なのですね(思えば昨年の「15年後の倉敷」もソレだったわけです)。
ともあれ、かつてこの秋田のやわらかな風土に包まれ、そして今また再びそのぬくもりの連関に触れることで、なみなみならない感慨を得ることができた旅でした。
かくして、ミッション完遂して、新幹線で帰途につくのでした。
(秋田新幹線「こまち」最新型車両E6系に乗りました~!)
◎余談ながら、この記事の内容、↑河野マリナ『その声を覚えてる』とビミョ~に重なってきてます(^^!)
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