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九州旅行の新フェイズ「夏の母娘男旅2017」はまたも受験で春実施 [プチお知らせ/日々の小ネタ]

さて、今年度は伊豆方面へ出かけました毎年恒例、佐倉智美・佐倉満咲の親子が行く「夏の母娘男旅シリーズ。
来年度は、満咲が大学受験の年に当たっていて夏は慌ただしいでしょう。
高校受験の年の前例に鑑みると、春に実施が妥当なところとなります。

そこで、いろいろ検討した結果、2017年3月某日、行ってまいりましたノ

……「夏の旅行」が春実施;
それどころか2017年度分なのに日程は2016年度中かよ…、というツッコミはナシで(^^ゞ

そして行き先は――。

満咲本人曰く「九州へ行って太宰府天満宮にお参りしたい」。

なるほど、それなら「学問の神様」からご利益を授かるとともに、九州北部の歴史の痕跡に触れる旅にもなりえます。
受験生としては殊勝な心がけです。

近年は「男旅」がすっかり「オタク旅」になっているなどという批判もあり(…どこから!?w)ましたが、これならむしろ非常に王道の観光旅行だとも言えるでしょう。


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というわけで、山陽新幹線、西へ。
まずは博多駅へ向かいます。
ちなみに九州へ行きたいなら「JR《福岡》駅」は決してめざしてはいけません……………と思ったけど、北陸新幹線開業にともなって第3セクター化されたためにあの「福岡駅」はもうJRじゃないのか;


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博多駅に到着すると、まず印象に残ったのが独特のネーミングセンスの商品の広告。
剥かなくてよい蜜柑だから「むかん」て;
……好きやワ、このセンス(^o^;)ノ
(ちなみにワタシとしては2011年2月以来の博多駅周辺来訪になりますね)


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到着後の腹ごしらえは牧のうどん
出汁を足すことで麺が膨れてお腹いっぱいになれる、なかなかの高コスパ


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博多駅前バスターミナルビルのトイレ、男女別トイレの手前にバリアフリートイレ2ブースがある構成です。


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福岡市内の歩道には志賀島で発見されたあの(日本史の教科書にも載っている)「金印」モチーフのオブジェも。


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昨年の「陥没」現場。
いちおうは修復されていますが、歩道と車道を区切る柵が仮設なあたりがいまだ生々しさを醸し出しているのかも。
受験生的には、ここの「落ちないセブンイレブン」も重要スポットですネ(^^)。


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その他、博多の市街をひとまわりすると、櫛田神社赤煉瓦館、あるいはキャナルシティなどをはじめ、いろんな観光スポットがクリアできます。屋台の味も楽しみたいところ。
「天神」の地名の由来でもある水鏡天満宮は、やはり菅原道真ゆかりの神社ですゾ。


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そうしていよいよ太宰府。
バス、電車ともに西鉄が特別デザインの車両を運行しています。


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天満宮の参道。賑わってます。

 太宰府天満宮公式サイト


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名物・梅が枝餅なども賞味しておくべし。


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そして参詣。
あと、ここまで来たからには境内から専用のエスカレーターでアクセスして国立九州博物館も見学しておくのが外せないでしょう。

 国立九州博物館公式サイト


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さて、所期の目的は達成したとはいえ、せっかくここまで来たので、もう少し足を伸ばしてみましょう。


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まずは大刀洗
旧駅舎を活用した、この「レトロステーション」は懐かしの昭和レトログッズなどが多数でしたが、元々は私設の平和記念館だった名残りも多々見受けられるところです。


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そして現在では道路を挟んだ向かい側に公設の平和記念館があり、本物のゼロ戦などが展示されています。
戦時中、この周辺に陸軍の飛行場などの軍事施設があり、いわゆる特攻隊の出撃を見送った場所でもあることに由来しています。
ゼロ戦以外は写真撮影不可なので上手く言えないのですがB29の実際の大きさを模したオブジェが展示されているのは空襲の怖さを実感するのに有用でした。

 大刀洗平和記念館公式サイト


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さてさて、続きましては、西のほうにも足を伸ばして佐賀県域、唐津にも訪れてみることにしました。


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鏡山温泉茶屋[美人の湯]にて温泉につかった後は…


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食事処でカツ丼堪能。


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………やっぱり「オタク旅」なんじゃねーかぃ!! (^^ゞ
アニメ『ユーリ!!! on ICEでの主人公・勝生勇利の故郷・長谷津のモデルが唐津で、この温泉茶屋は勇利の実家「ゆーとぴあ かつき」という設定の場所。 → アニメ『ユーリ!!! on ICE』公式サイト
※許可を得て撮影しています


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唐津駅も聖地巡礼者を迎える態勢が万全です。
駅にある観光案内所も激プッシュしているばかりか、アンケートに答えると特製聖地巡礼マップももらえます。
てかもぅ唐津市だけではなく佐賀が乗り出してコラボ展開してるわけですね。


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いわゆるエキナカ店舗でもコラボ展開中で、グッズも売ってました。


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というように『ユーリ!!! on ICE』の経済効果はすざまじく、唐津神社には痛絵馬がいっぱい;


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こちらは京町商店街(作中の久町商店街)。
アーケード街と交差する道のほうも良い趣の町並みでした。


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唐津くんちの曳山が有名な唐津を、かくしてアニメがきっかけで訪れることになったのもまた一興。


そんな、この2017年春先の「夏の母娘男旅」。

今回、九州を巡って思ったのは、自分にとっての九州旅行は、2013年の「タイムマシンでやってきた18年後さえ超克して、もはやまったく新しいフェイズに入ったのだなぁということ。

娘・満咲の成人も視野に入ってきた今日このごろですが、そうやって人生は続いていくのでした。


今般の旅行に関連してツイッターで補遺した内容をツッコミブログのほうにもまとめました。
あわせて御覧くださいノ(2017/05/01)
 → 唐津聖地巡礼余話:男女二分社会の闇はまだまだ深い!?


◇◇


「彼らが本気で編むときは、」親子鑑賞会 [プチお知らせ/日々の小ネタ]


 1702KareramuA.jpg◇◇


荻上直子監督の新作オリジナル映画『彼らが本気で編むときは、の劇場公開が先月より始まっています。

本作は、ジャニーズ俳優である生田斗真がリンコというMtFトランスジェンダーの役を演じるということで、公開の前から話題になっていました。

 →『彼らが本気で編むときは、』公式サイト
   http://kareamu.com/


セクシュアルマイノリティが登場する映像作品は、今では珍しくはありませんし、その描かれ方も時代を追うごとに洗練されてきています
(アニメと実写では一概に同列に扱えない側面もありますが、プリパラ』のアニメなどがその最前線だというのは、否定できない事実でしょう)

一昔前によくあったようなステレオタイプな「オカマ描写」は、今日の基準ではいちじるしくポリティカルコレクトネスを欠くものなのだ、という共通認識は、着実にこの社会の標準になってきています。
ただ、それでも油断すると「翠星のガルガンティア5話問題」のような事案に突然出くわしてメンタルを削られることもないではないので、まだまだ道半ばではあるのでしょう。

そんな中にあって、この『彼らが本気で編むときは、』は、荻上監督や演じる生田斗真氏以下制作側が、各種の現実的制約とも丁寧にすり合わせをおこないながら誠実に努力を積み重ねた成果が現れているように見受けられます。
結果、作中のリンコは、絶妙の人物像で描き出されています。


 


……コレはぜひ観に行かねば。

そう思っていた3月上旬。
学校の期末テスト(高2の学年末テスト)が終わって肩の荷をおろした矢先の我が娘・満咲が「観に行きたい」と言ってきました。
なるほど、性の多様性にかんして人並み以上に関心がある一方、ジャニオタでもある満咲としては気になる作品だというのは自然な流れでしょう。

あぁ じゃぁ行ってきたら?

ところが、なんでも映画の内容が内容だけに、ここはゼヒともワタシといっしょに観て、鑑賞後にいろいろ感想などまじえてディスカッションしたいのだそうです。

………なんでやねん(^^;)

まぁ、そのへんはある意味しっかり親の背中を見て育ってくれてる証拠だということで、頼もしいというか喜ばしいというか……;
いゃ、ただ単に親といっしょに行けば代金を出してもらえるだろうという魂胆かもしれないが!

…とはいえ、私たち親子がそろって客席にいるというのも、スクリーンに映し出されているフィクションと、その外側にある現実世界のクィアファミリーの実相が呼応するという点で、メタ的なオモシロさはあります。

もしも生田斗真を目当てにやってきた「ミーハーなジャニオタ」のような観客がもし本当に来ていて、終映後に
「あんな人ホンマにおるんかなぁ…」
「ウチの親がああやったらどんなんなんやろ??」
 のような無邪気な感想を述べ合っていたら、それを耳にしながら
「(ココにおるでぇノ)」
「(ウチあんなんやでェ、デュフフフ~♪)」
 と意地悪くほくそえむのもオツなものです(!?)。


  


というわけで、2017年3月某日、近隣のショッピングモール併設のシネマコンプレックスにて、「『彼らが本気で編むときは、』親子鑑賞会」を実行してまいりました。

思えば『ぼくのバラ色の人生』は梅田ガーデンシネマまでわざわざ足を運ばないと(近場には)他に上映館はなかったと記憶しています。『トランスアメリカ』もたしか京都市内のミニシアターまで出かけたはずです
(去年の『リリーのすべて』(←スミマセン 見逃してます;)は、そのへんの事情どうだったでしょうか??)。
それが、こんな日頃の立ち回り先であるショッピングモールにあるシネコンで、こうした《トランスジェンダー映画》がこともなげに上映され鑑賞することができるとは、なかなか時代は進んだものです。

なお、実際に劇場に入場してみると、行った曜日や時間帯のせいもあるのかもしれませんが、客層はジャニーズ系というよりは、わりと「訓練された」感がある人が多い気がしました。
人権センターの職員です」という雰囲気の人たちや、あとは私たちと同様にリアルセクマイオーラを出しているのがそこはかとなく感知できたり;

補足しておくと、インターネットを少し検索したところでは、いわゆるジャニーズ・生田斗真をきっかけに本作に関心を持ったと思われる方々にあっても、その鑑賞後の受け止め方がじゅうぶんに真摯な感想は多く見られ、本作の訴えようとするところはしっかり伝わっているように見受けられました

そうして上映――。

……なるほど!

ネタバレにならないよう詳しくは述べませんが【とはいえ以下、若干はネタバレが含まれます】、細かいところまで丁寧に目配りされた、いろいろよく行き届いた仕上がりの映画です。

たしかにリンコについての各種描写は映画としての各種表現のための事情から一定の類型を適用してありました。
したがって、これがトランスジェンダーの標準像だという誤解を観客が抱いてしまうと、性的少数者への誤った認識が広まってしまうという危惧は一蹴されるべきではありません。
しかしそれは本来は観客側のメディアリテラシーに依存する問題です。

総体的にはよく配慮された表現で、むしろ従前から一般社会には根強かった偏った「オネェ」イメージを覆して、適正な理解により近い認識を促す方向に作用すると思われました。
その点では、どうしても作品として仕上げるうえで捨象されてしまう要素があるために誤解を招きかねないリスクよりも、全体として、この作品が公開され多くの人々の目に触れることが、セクシュアルマイノリティにとってより良い方向に社会を動かす効果のほうが高いと判断できました。

もとより、この映画の主人公そもそもリンコであるというよりは、母親が育児放棄で家を空けてしまったために、叔父のマキオ(演:桐谷健太)を頼って身を寄せることとなった小学5年生の少女トモ(演:柿原りんか)のほうです。

トモの学校の友人にもゲイの同級生カイ(演:込江海翔)を設定するなど、性的少数者への根強い偏見の問題も織り込まれた作劇なものの、それに加えて、問題家庭・育児放棄・児童虐待の問題、いわゆる毒親など親子の確執、あるいは介護施設や認知症をめぐっての老人問題なども視野に入れたストーリーは、すこぶる多面的で複層的です。

そうした中で、トモがリンコと出会うことで、最初はぎこちなくコミュニケーションを取りながらも、しだいに打ち解けて、やがて互いに互いが大切な存在になっていく。
こんな、叔父も含めて3人での共同生活は、ひとつの家族の形でもあるのではないか……?

そんなふうになかなか複雑で深遠な、心に訴えるポイントが周到に随所に仕込まれた映画だったと言えます。

それゆえにラストも、問題がすべてめでたく解決するハッピーエンドにはならず、ある意味 後味はビミョ~な感じです。

しかし、世の中にはいろんな人がいて、各々どうしようもない煩悩を抱えて生きていて、それぞれの業はすこぶる深い。
そんなどうにもならない現実の中で、結局は誰もが手探りで生きていくしかない……。

その意味では、安易に中途半端な解決を描かない方針は、むしろ誠実です。
終映後の観客に向けて、ヒントだけは示したから、あとは現実世界に持って帰って、現実世界の何かを何かを解決するためにせいぜいいろいろ考えてね~ ということなのでしょう。
そういうタイプの映画なんですよ、コレは。


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そんなこんなで、終映後のワタシと満咲は、ショッピングモール内のフードコートに移動して、「親子鑑賞会」プログラム後半のディスカッションをひとしきりおこなうこととなりました。

「ぃや~、生田斗真 絶妙やったわー」

「アレはじつに高度なバランスでの成立を実現してたナ。介護施設でフツーに勤務しているくらい女性としては自然な立ち居振る舞いを身につけているMtFトランスジェンダーとして自然なキャラでないといけない一方、人々の偏見にさらされるという作劇上の必要や観客にも一定の違和感は与えないといけないという演出上の要求という、相反する条件をクリアしないといけない難しさがあったところを……」

「リンコとトモが、だんだん仲良くなっていく様子の描き方も細かかった。最初は『トモちゃん』だったのが『トモ~』になっていったり」

「そやったか。…最初は唐突におっぱい触ってみさせようとしたり、演出意図をはかりかねるくらいぎこちなかったのに」

「いっしょに編み物するようになったり…」

「ちなみに、リンコの編み物とか、あと料理も上手で、全般的に家事能力が高かったり、あと介護の仕事で見せてるような細やかな心配り。こういう女性的とされる特質は、あくまでもリンコがそうであるというだけで(トモの実母と対比的に位置づける作劇上の都合もある)、ココを《やっぱり心が女だから》みたいに解釈する人がいたらちょっと困るかな」

「………あ゛、料理とか編み物とか細かい心配りって《女らしい》ことなんや(・・;」

「……………;(ぃや、オマエの感性のほうが正しいんやけどナ(^^;))」

「気持ちが塞いで押し入れに引きこもってしまったトモに糸電話で語りかけるリンコ……という場面も好き」

「それなノ 押し入れといえば《クローゼット》。いわゆるセクシュアルマイノリティが引きこもる場所なんやけど、あのシーンではリンコのほうがクローゼットの外側にいるという逆転が良い味を出してるんやないかな」

「それから、みんなでお花見ピクニックに行くとき、自転車で競争みたいになったとき、リンコが気合い入れたら『ゥオ~っ!』て男っぽい声を上げるやん?」

「あったね」

「アレもリアルやと思った。人は誰でもそんなに簡単に女とか男とかの2つに割り切れへんもんなんやから…」

「わかる。女らしくせねばと汲々とは必ずしもしていないリンコのキャラに深みが出る演出やった(……ソレ、家ではワシがよくあんなふうに叫んでるってことか!?)」

「同僚の介護士さんの、結婚準備が大変ってトークもオモシロかったくない?」

「《結婚=シアワセ》という短絡に乗らずに、上手いことズラしてあったね」

「……編み物で編んでたのが《男根のメタファー》やったけど、アレってやっぱ供養したいもんなん??」

「んー、人によって思いは違うやろうけど、やはりフクザツな気持ちはあるやろうし、かつての自らの煩悩の数々が収斂する身体部位である……という側面がある場合は多いかも。ワシもそれなりに思い入れはあるかな」

「なるほど……。でも(リンコが急に事故で入院した)病院のシーンはシビアやったなぁ」

「あの展開は唐突感もあったけど、トランスジェンダーが直面しがちな問題としては、描きこまれる意義はあったね。………ちなみにああいう場合ワシもまだ、男部屋に入れられる可能性あるけど、個室はフツーは1万円未満からあるはずやから(それでも結構な出費なものの、入院費用補償の医療保険で賄いうる)」

「桐谷健太(が演じるマキオ)がきちんと抗議してるのもよかった。……物語全体として他にもいろいろ厳しいことが起こる中で、あの人がブレずに常にリンコのありのままを受け入れてるのが、映画全体に観客の安心感を提供してたんとちゃう?」

「せやな……。あと、他にも細かい演出いろいろあったけど、思わず落涙しそうになったのが、カイが自殺を試みたときに睡眠薬の錠剤を魚の形に並べるやん、そのときに目玉のところにだけ色の違う粒を置くという描写。アレは(レオ・レオニ作の絵本で日本の国語の教科書にも採録の)『スイミー』の話を下敷きにしてると思う。つまりみんなと違う特徴を持つマイノリティにも存在意義があるという寓意の…」

「そうかぁ、アレそういう意味か」

「で、終盤のトモがカイにいろいろ話しかけるシーンは、ちょっと口が悪いくらいのトークやったけど、あれは、トモとカイの気持ちがより近づいたことを示してると解釈していいんかな」

「そうやと思うデ。締めにはトモちゃんが『ゼッタイにゼッタイに……』と言うの、あそこは心強かったし」

「あそこまでに、トモちゃんが、いろんなことを経てエンパワーされたことがうかがえたね(だからラストが問題山積のままでも希望は示されてる)」

「あの(ラストシーンの)後、いったいどうなっていくんかなぁ……」


………などなど;

話題は尽きなかったのですが、大きなネタバレを避けると紹介できるのはこれくらいになるでしょうか。


  


あと、ツイッターでもいくつか関連のツイートをおこなっていますので、参考になりそうなものを以下に貼っておきます。

一昔前は、こうした実写作品でのトランスジェンダー役はFtMもMyFも女性俳優が演じてたものだけど、このところの男性俳優によるMtF役の流れは、やっぱ時代の進展であり、往年のステレオタイプで偏見助長的な「オカマ描写」からは一皮も二皮も剥けた洗練された演出だと言えるのでは

チラシの説明文、きちんとMtFトランスジェンダーを「女性」として扱った書き方がしてあるあたりにも好感度が高いのだ

と、場面カット集に肝心の(?)生田斗真の写真がない。まさか「女装した男性の姿を不快に思う人もいるから」というような過剰に先回りした「配慮」か!? いゃぃや、もしもそうならそういうのを差別と言うんだよ。そういう腫れ物にさわるような対応がイチバン良くないだろうに… →続く

その上で一例を挙げれば、働き方を含む男性の生きづらさが問題として俎上に上る今日、会社一筋で仕事だけが生き甲斐だった男性が定年後に認知症になって施設になったらこんな感じなんだろうなぁ…という様相を上手に切り取って作品に包摂しているのは、巧みなつくりだなと思ってました

ぶっちゃけ、『彼らが本気で編むときは、』は、30年前の映画『ゴンドラ』(RT)に田亀源五郎『弟の夫』的なコンセプトを加えてリメイクしたもの……に見えたんだ

……ところから『彼らが本気で編むときは、』は『小林さんちのメイドラゴン』を補助線に当てて読み解くのも良手ではないかと思った。
トモとカンナを、両親から育児放棄されて家を追われた少女がツテを頼った世帯のもうひとりの同居人が非常に個性的だった…という共通項で括ると


というわけで、セクシュアルマイノリティの存在をも描き込みながら、人がそれぞれ生きていく困難を多角的に映し出し、家族のありようについて深く考えさせられる物語を展開した『彼らが本気で編むときは、』。

この2017年を代表する名画が誕生したと言えるのではないでしょうか。


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※本記事中の画像は映画館で配布のチラシ


◇◇


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